【設備設計】V2H(Vehicle to Home)と家庭用蓄電池はどちらがお得か?

 EV(電気自動車)を見かける機会が多くなってきた。日本では販売台数に占めるEVの比率は2%代だが、アメリカのカリフォルニアでは20%、中国では30%と日本の10倍くらい売れている。現在設計している住宅兼クリニックの案件でも災害用にEVをバックアップ電源として使えないか?と依頼があった。

  バックアップ電源の方法としては大きく2つあるが、そのメリデメについて検討してみた。

1)EV(自動車)をV2Hで住宅とつなぐ

 △メリット
 ・電気容量が60kwh~80kwhと大きい
 ・電池システムの購入をしなくてもよい(設置も可)
 ・急速充電の時間を約半分にできる
 
 ▼デメリット
 ・現状すべての車種を網羅しているV2Hはない

2)住宅に専用の蓄電池を設置する

 △メリット
 ・EVと連携しないので車種の縛りが発生しない

 ▼デメリット
 ・各メーカー電池の容量が10kwh程度とEVに対して容量小
 ・蓄電池を必要分購入する必要がある
 ・蓄電池の置き場所が必要

3)メリデメ比較

 自動車の蓄電池は大きく、活用すれば家庭用蓄電池よりもメリットが多いことが分かる。東日本大震災級の地震だと災害に1weeks程度がかかるため、70kwh程度のEVの電力が使えると7日間の生活ができ、災害用電源としては非常に有用だという事が分かる。 

4)理想と現実

 理想的には大きな電池を積んだEVを活かしたいが、現実には”メーカーの互換性”という壁が立ちはだかる。V2Hで日本でトップシェアはニチコンというメーカーのものだが、このメーカーはテスラには対応していない。そして、テスラは家庭用蓄電池を日本で発売しているが、V2Hは未導入で自動車と連携することが出来ない。

 そう、スマホのIphoneとアンドロイドの様に互換性が無いのだ。5年6年で買い替える事が想定される自動車と10年以上使う可能性のある住宅設備. 現状は連携をせずに家庭用蓄電池を設置するのが良いかもしれない。手を出すのはライトニングケーブルがUSB Type-C統一された様に充電規格が統一された後でもいいかなと感じる。

5)家庭用蓄電池を導入するメリット

 家庭用蓄電池を導入した場合のメリットを考えてみる。家庭用蓄電池を使う場合、費用的に2つのメリットが考えられる。

①夜間電力を使用することで電気料金を下げる
②太陽光の電力を貯めておくことで電気料金を下げる

①夜間の深夜料金
 東京電力のHPによると昼間の電気料金に対して夜は3割ほど安い。毎日深夜料金の電力を使えば年間で2~3割ほど電気料金を下げられる。年間15万円程度だとすると、3~4万円は得ができる。

②太陽光の電力
 売電価格は16円で電気代は30円程度なので、太陽光発電で余った分を蓄電池に貯める方が倍お得という計算になる。

大切なのは①、②のメリットを享受するための電池容量。①については1日分の電気容量があればよい。②については太陽光の発電量にもよるが、こちらも1日分あれば、かなり網羅できる。1日分の消費電力は12kwh程度なのでそれくらいあれば金額的にはメリットを十分得る事が出来る。

現時点では自動車が大きな電池を積んだEVではなくHVの方が優れている様に、必用十分な家庭用蓄電池を設置することが経済的な正解だと思う。

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