#111 給水より排水設計の方が圧倒的に難しい【機械設備】

 超高齢化が進む日本。それを実感するのは街に次々にできた高齢者向け施設だ。デイサービス施設の事業所は最近は数の増加自体は落ち着いているが、それでも全国で44000件という数はコンビニの店舗数に近い。デイサービス施設はその名の通り日帰りが前提の施設になっている。機能改善や入浴介護サービスなど、高齢者にとってはジムやスーパー銭湯に行く感覚に近しいものがあるかもしれない。

デイサービス事業所数(全国)

 デイケアセンターの浴室はこんな感じ

デイケアセンターの浴室

普通の戸建てやマンションではユニットバスが一般的だが、デイケアセンターでは浴室自体の面積が広く、湯船も様々なタイプが必要なので、専用設計(在来工法)となる。在来工法でも給水は一般の浴室や洗面器と同じ混合栓で問題はないが、洗い場と浴室が複数あるため排水は何点か討するべき点がある。

①老人が滑って転ばないように、床が早く乾く様に排水経路を各給水箇所に設定する必要がある
②排水管からのにおいが浴室に上がってこない様に適切にトラップを設ける必要がある

そこで悩むのが、トラップの設定箇所だ。

案①外の桝にのみつける
  それぞれの配管内の臭気が室内に上がってくる可能性がある。
  最初は問題ないかもしれないが、長年使っていると問題になる可能性がある。
案②各排水につける
  つまりの原因になったり、排水量が少ないトラップがあると逆ににおいの原因になる

 2者択一を迫られる設計者の立場からすると、両立案を検討したくなる。ネットを検索しているとこんな良いものがあった。床排水とバスタブ用の排水を薄型(スラブ100mm)で完結してくれる商品

 この商品自体はマンションなど、ユニットバスを置き換えるために作られた商品のようだが、これを使えばば、むやみにトラップを増やさず、適切な箇所にトラップを設定しながら排水経路を設定できる。2者択一を迫られたら第3の案がないか検討することも時には大切かもしれない。


目次