【設備設計】築70年の共同住宅を見て感じる事

 弊社が入っているビルの真向かいに覚王山アパートという築70年の元共同住宅がある。2003年に改装されて、共同住宅からクリエーターや工芸家が入居するテナントビルとして使われてきたが、老朽化で今月末に営業を終了して取り壊されることになった。

 70年前の共同住宅の間取りはこんな感じだったらしい。この間取りで木造2F建て4世帯が入居していた。階段が無いが、外階段があったとのこと。外にお風呂があるが、ガス給湯器なんてない時代なので、火でお湯を沸かしていたのだろう。

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 1955年は家電も洗濯機が少し普及し始めたくらいで、冷蔵庫も普及していなかった。そんな時代の建物は給排水、衛生、電気といった設備もなかった。

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 戦後10年。まだまだ貧しく、でも少しづつ前を向き始めた日本。生活に足りないもの、不便、不満が多くて、それを解決するための仕事に追われ、でもみんなで肩を寄せ合って暮らし、頑張った分だけ少しづつ生活が良くなっていった時代がその間取りから少し伝わってきた。

 弊社でも共同住宅は仕事の半分弱を占める。賃貸の物件だとワンルームが多い。ネット、SNS、インスタなど、物理空間以外で繋がれるツールが発達したが、実生活空間は個人ごとに分離が進んでいく流れがある。

 誰も困っていないが、誰もが欲望を満たせない社会。そんな悲しい将来にならない様に、50年以上先の生活も少しだけ想像して今の設計に携わっていきたいなと思った。

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